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コラム・中国雑談


その20  なぜ中国に反日デモが起きたのか




         歴史的な出来事

2005年4月上旬と中旬、中国各地で起きた反日デモは、
1949年新中国設立以来初めての本格的な反日であった。
あれだけの参加者、あれだけの投石などによる破壊活動、
長年、日中友好のために努力してきた関係者の心に、
血の流れるほど、深い傷がついてしまった。

         江沢民元主席の非

江沢民は立派な政治家だと思う。
資本主義経済を運営する共産党の地位を守るため、
「3つの代表」論を説き、共産党を「全民党」に変えている。
しかし個人の嫌日感情を抑えきれず、
日本訪問時に多くの日本国民の反感を買ってしまった。
後に海外でも人気のある朱鎔基に日本を訪問させ、
住民と直接対話し、中国の面子を挽回した一幕があった。
問題はそこからだ。中国に新しい歴史教育が始まった。

          中国の教育

毛沢東時代は、日中友好が教育の中心であった。
戦争は一部の軍国主義者が起こしたものであり、
日本の国民や一般の軍人は中国人と同じ被害者だと。
毛沢東自身、「日本民族は偉大な民族である。」と説いた。
江沢民訪日後、歴史教科書の教師用指導書には、
「日本軍の残虐行為の部分を生徒に真剣に読ませて、
日本帝国主義への深い恨みと激しい怒りを生徒の胸に
刻ませよう。」というトンの違った言い方があったそうだ。

          小泉首相の非

過去への恨みと怒りを現在の日本へ向かわせた
最大の材料を、小泉首相が靖国神社参拝を以って提供した。
小泉純一は政治家としては立派なものを持っている。
時間は短かったろうが、日本国民に希望を与えてくれた。
しかし、A級戦犯の合祀以来天皇が参拝を止めているのに、
小泉首相は「亡くなればお仏」という世界では理解されない
日本文化に拘り参拝し続ける頑固さは、少なくとも、
偉大な政治家とは程遠い、選挙重視の人並みの政治家だ。

           なぜ今なのか

日本の歴史教科書や靖国神社問題は中国への実害はない。
当然、単純に今年が終戦60周年という年だからでもない。
背景には日中両国のアジアにおける主導権争いがある。
日本の本音: いつまでも政治小国に甘んじていたくない。
中国の本音: 日本の政治大国化を容認したくない。
アナン事務総長の日本を常任理事国に推す話が出て以来、
また、日米安保条約が台湾海峡を含ませたとの発表以来、
急に雲行が変わり、中国は黙っていられなくなった。

          中国共産党の思惑

人民日報海外版を見れば、その意図するところが覗える。
4月2日成都、4月3日深せんで反日デモ発生後、
4月6日一面評論文: 「日本右翼教科書は反面教材」
4月9日北京大規模反日デモ発生後、まだ物足りなかったか、
4月12日アンケート: 「日本歴史教科書は中国人民への侮辱」
4月15日一面評論文: 「常任国入りは片思いで出来るもんか」
15日の文章の中で特に激しい口調で対日批判を展開。
「日本は中国に対抗しようとするのは重大な間違いであり、
中国と衝突するための落とし穴に落ちってしまったのだ。」
その直後の4月16日に、被害最大の上海反日デモが発生。
上海市政府が懸命に抑えようとしたので非常に残念だった。

            喧嘩両成敗

その後、逮捕者を出し、中国は全面的に押さえ込みに転じた。
危険と思われた5月4日にも反日デモは起きなかった。
中国共産党の執政能力を世界に見せることができた。
しかし、覆水は盆に帰らず、中国自身への打撃も大きかった。
デモは、世界における中国のイメージの低下につながった。
破壊された日本料理店は、中国人経営によるものも多かった。
日本から中国への観光客の減少は一時的であっても、
日本企業の中国投資を他国に分散する動きは止められない。
まさに日経新聞の言うように、石は投げた人に向かう。

          取り返したい一衣帯水

日中間の政治的対話の足りなさを痛感する出来事だった。
50年前のLT貿易時代はまだ本音ベースの対話ができていた。
日本はドイツを見習い、堂々と歴史を直視すべきであろう。
アジアに貢献したいなら、周辺国民の気持ちを理解すべきであろう。
中国は、戦後日本の中国への貢献をもっと紹介すべきであろう。
数年前に始まった文明教育をもっと続けるべきであろう。
日中政府間で相談中の文化交流などは、みんなでやろう。
隣国である以上、醤油の瓶ぐらい互いにぶつかることはある。
だが、日中両国の協力関係なしに、アジアの繁栄はありえない。
2000年の友好が50年の対抗に潰されてたまるものか!


2005年5月8日

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