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中国ビジネス実務指南


中国ビジネス実務指南― 麗澤大学外国語学部 教授 梶田 幸雄

【第206回】新しい消費経済の方式を考慮した販売戦略 〜 O2O、品質・サービス、社会貢献、中国ブランド開発

まもなく春節を迎える。日本に留学している中国人留学生も多くが一時帰省する。中国で「年貨」という言葉がある。正月に向けて色々な日用品などを買い揃えることをいう。

「年貨」は、冬至から始まり、臘八(冬至後第三の戌の日に行う祭りで、陰暦の12月8日釈迦の成仏の日)すぎにピークとなり、元宵(旧暦1月15日)まで続く。1年間で最も商品の売り上げが大きい期間であった。

ところが、商戦に最近変化が現れている。「双11」(独身の日)や「双12」(求愛する日)といった大型ネット通販商戦日が作られ、「双11」及び「双12」で大量の消費が行われている。そこで、「年貨」の商戦のあり方にも変化が生じてきている。消費方式が店舗に行って商品を購入することから、スマートフォンで買い揃えるということが多くなってきていることである。

このとき、メーカー及び小売店舗は、「年貨」に限らず販売戦略を見直す必要がありそうだ。

第一に、O2O(Online to Offline)の活用である。O2Oとは、ソフトとハードの結合オンラインで商品情報を調べ、これをもとに店舗に行き商品を購入することをいう。最近の消費者のニーズは多様化し、個性化してきており、また、「双11」及び「双12」のときにネットで注文・購入した商品には偽物や不良品が著しく多いという問題が生じている。ネットで商品情報を調べ、クーポンを持って店舗に行き、商品を確認してから購入したほうが安心であるということがある。

第二に、変化する消費傾向に対応することである。高価な商品を購入することから、品質やサービスが重視されるようになってきている。商品からサービスの購入、すなわち、食品や衣服など実物を購入していたのが、健康、アミューズメント、文化などに消費が向かっている。このことを意識した商品販売方式が求められる。

資生堂は、2017年1月から、日本で販売する主力の基礎化粧品「エリクシール」を中国市場に投入するが、この際に上海などに専用店舗10店を構え、店内では日本と同じように、美容部員によるカウンセリングが受けられるようにするという。

第三に、社会貢献という視点から商戦を行うことである。年貨」は、中国人の意識として「好貨」、「吉祥」の代名詞であり、元々は貧困地区を支援しようという考え方があったという。そうであると、メーカーや小売店は、このことを強く意識した事業展開を検討するのがいいだろう。

第四に、中国ブランドの開発である。最近の中国人には、民生分野ではメイド・イン・チャイナの製品を購入しようという意識が強くなってきている。ノキアが、再び中国市場に回帰しようとしているようだが、中国メーカーが台頭してきているところ、中国メーカーでないノキアの回帰は難しいと言われる(「諾基亜回帰 専家称靠情結拼不過国産品牌」証券日報 2017年1月13日)。これに対して、日産自動車は中国での新車販売台数(小売台数)が2016年に対前年比増を示したが、1月に発売した中国専用ブランドの多目的スポーツ車(SUV)「ヴェヌーシアT70」が貢献したという。

中国市場における商品販売は、難しくなってきている。中国企業との競争が激しくなり、外資に対する警戒心も多少強まり、国内ブランドの保護・育成とこれに応じた消費性向の変化がある。このような困難はあるが、中国はなお期待可能性の高い市場である。米ウォルマート・ストアーズは、グループで2017年1月末までに再び数百人の人員削減計画があると伝えられている。2015年10月に450名の人員を削減し、2016年9月には米国7,000店で人員削減を行なっていたのに続く人員削減である。しかし、中国については2015年から2017年に115店舗を増設し、3万人を雇用する計画である(証券日報 2017年1月13日)。セブン&アイ・ホールディングスは2020年をめどに中国内陸部でスーパーを3倍の20店に増やすということも伝えられている。

新しい消費経済の方式を考慮した販売戦略を構築することで、市場開拓余地はまだ大きいものがある。

梶田 幸雄氏 プロフィール 

  • ●現職
  • 麗澤大学外国語学部 教授
  • ほかに中小企業総合事業団国際化支援アドバイザー、富山県貿易・投資アドバイザー、北京航空航天大学法学院兼任教授などを兼務
  • ●略歴
  • 学歴:中央大学大学院博士後期課程修了。博士(法学)
  • 職歴:財団法人日中経済協会、日本能率協会総合研究所、日本経営システム研究所
  • ●専門分野
  • 中国法、国際企業法、商法
  • ●研究業績(主な著書)
  • 『チャイナウォール』(通商産業調査会、1993年)、『中国への事業展開と法制度』(国際商事仲裁協会、1995年)、『中国進出企業のトラブル事例と解決法』(日本能率協会マネジメントセンター、1995年)、『中国投資はなぜ失敗するか』(共著、亜紀書房、1996年)、『日中対訳 中国進出企業の各種契約モデル書式集』(日本能率協会マネジメントセンター、2003年)、『中国国際商事仲裁の実務』(中央経済社、2004年)など。

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