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中国ビジネス実務指南


中国ビジネス実務指南― 麗澤大学外国語学部 教授 梶田 幸雄

【第210回】急成長が期待される環境ビジネス

PM2.5など環境の悪さが日本において多く報道されている。第13次5カ年計画(以下、「13・5計画」という。)においても、環境改善が中国政府にとっての重要テーマとなり、このための対策・施策も本格化しつつある。この中で、外国企業にとって環境ビジネスのチャンスが拡大しつつある。中国で環境関連の分野が日米欧を凌ぐほどに急成長する可能性もあるっている。  

これまで中国政府は、環境の悪さを意識しつつも経済成長の維持のため、とりわけ地方政府にとっては環境汚染企業の取締りが地方経済を停滞させる原因となりかねないという懸念から、環境問題になかなか手をつけられない現状にあると伝えられる。

しかし、13・5計画に入って2020年の経済発展目標を立て、この目標達成のための施策を打ち出す中で、環境問題へ手をつけざるを得ない状況になってきている。また、環境技術を発展させることが、中国経済の持続的発展にとっても不可欠であるとの認識が強まってきている。さらに、一般市民のグリーン・ライフの重視、認識の向上もこれを手伝っている。

中国国家発展改革員会と国家能源局は、2017年1月に13・5計画期にクリーンエネルギーの利用とエネルギー効率・品質の向上を促進し、一次エネルギーに占める化石燃料の利用を減らすという計画を発表した。また、2020年までにエネルギー消費を15%削減することも決定した。

この計画達成のために市民がグリーン・ライフを送れるようにするための施策も打ち出されている。 例えば、ホーム・ソーラー・プロジェクトが始動し始めていることがあげられる。2013年に家屋にソーラーパネルを設置することに対する補助金支給が決められている。ソーラーパネルを設置した世帯は、1キロワット時あたり0.42元の補助金が20年間にわたって支給される。さらに余剰発電については1キロワットあたり0.43元が支給される。上海市政府は、5年間にわたってこれに1キロワットあたり0.4元の追加支給をする。ソーラーパネル設置には3万1,000元程度が必要であるようだが、この場合には毎年2,100元程度が補助金として支給されることになりそうである。投資に対するリターンは決して多くないが、それでもソーラーパネルを設置する家屋が増えてきている。

もう一つのケースは、電気自動車・エコカーの普及活動である。今、消費者がBYDとダイムラーの合弁で生産されている「Denza(騰勢)」を購入すると30万元が補助金として支給される。Denzaの小売価格はおよそ37万元であるから、7万元でDenzaを購入することができるということになる。補助金の30万元という金額は、上海の中間所得層の年収の1.5倍程度に相当する金額である。中間所得層でも高級車を購入することができる。

中国政府は、電気自動車(EV)などエコカーの普及政策を強く推進している。2018年には先進国レベルの環境規制基準を導入する計画である。さらに、2020年まで1台につき約100万元という大規模な補助金を支給することで、販売台数を累計500万台にまで伸ばす計画である。

以上のようなクリーンエネルギー分野の技術を現時点の中国企業・研究機関が持ってはおらず、なお先進国から随分と遅れている。そこで、この分野に関しては、外国企業に大きく依存したいところである。ここに外国企業はそこに大きなチャンスを見いだすことができる。

ただ、中国政府がEVなどエコカーを生産できるメーカーを大きく制限するということが報じられている。中国政府は、現在約120社に達するエコカーメーカーを、2018年以降は20社程度まで絞る案を検討しているという(日本経済新聞 2017年1月12日)。エコカーに関しては、技術やノウハウのない中国企業の新規参入組が目立つそうであるが、外国企業と合弁させることで当該技術の移転をさせようというのであろう。このような不合理な規制が存在することは、外国企業にとっては必ずしも開かれた公平な市場における競争環境が中国ではなお整備されないという問題が残りそうではある。

梶田 幸雄氏 プロフィール 

  • ●現職
  • 麗澤大学外国語学部 教授
  • ほかに中小企業総合事業団国際化支援アドバイザー、富山県貿易・投資アドバイザー、北京航空航天大学法学院兼任教授などを兼務
  • ●略歴
  • 学歴:中央大学大学院博士後期課程修了。博士(法学)
  • 職歴:財団法人日中経済協会、日本能率協会総合研究所、日本経営システム研究所
  • ●専門分野
  • 中国法、国際企業法、商法
  • ●研究業績(主な著書)
  • 『チャイナウォール』(通商産業調査会、1993年)、『中国への事業展開と法制度』(国際商事仲裁協会、1995年)、『中国進出企業のトラブル事例と解決法』(日本能率協会マネジメントセンター、1995年)、『中国投資はなぜ失敗するか』(共著、亜紀書房、1996年)、『日中対訳 中国進出企業の各種契約モデル書式集』(日本能率協会マネジメントセンター、2003年)、『中国国際商事仲裁の実務』(中央経済社、2004年)など。

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