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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


「金箔入り白酒」問題と「企業の社会的責任」



 このほど、中国国家衛生・計画生育委員会(衛生計生委)は、「「金箔」を新しい食品添加剤として認可すること」に関し、パブリックコメントを募集する通知を発表しました。これは、酒造メーカーからの認可申請を受けての対応とみられ、認可予定の内容詳細は、金箔は白酒(中国の蒸留酒)にのみ添加可能とし、制限量は白酒1kg当たり最大0.02gまで、というものです。
 「金箔入り日本酒」の存在を知る日本人の目から見ると、「金箔入り白酒」が登場してもさほど違和感はありません。しかし、この通知が今、思いのほか大きな反響を巻き起こしています。
日本の市場では、「金箔入り日本酒」はお正月等のお祝いムードを華やかに演出する商品として、その価値を認められているのではないでしょうか。お酒自身に「祝いの席」に用いられるという性質がある以上、好き嫌いは別にして、これを「浪費」等と批判する声は聞かれないように思います。
 中国では、習近平政権の推進する「倹約令」がますます深化しており、近頃では政府関係のみならず、ビジネス等、様々な局面において「無駄な贅沢は慎むべし」という風潮が台頭してきています。このような背景の中、「金箔入り白酒」に対しては批判的な意見が噴出しています。
批判内容としては、「必要性が認められない」「金箔入りを理由に商品価格を不当に釣上げる策略だ」というものの他に、「社会の風紀を乱すもので、企業の社会的責任が問われる」という厳しいものまであります。
 「白酒」は以前、政府関係の接待の席で極端に高価な商品を多用することが常態化していたために、「腐敗」問題と関連付けられて批判を受け易いのは確かですが、今の中国社会で否定・批判される「贅沢」とは一体何なのか、考えさせられます。
 「不必要に豪華なもの」というと分かるような気もしますが、絶対的な基準は存在しません。また、社会全般が「質素倹約」を第一に望んでいるのかというと、そうとも言えません。現在の中国では、「生活の質」という言葉を「反腐敗」や「倹約」と同じくらいよく目にするからです。そして、ここで言う「生活の質」は多くの場合、「物質的な豊かさ」を指して用いられているのが現状です。
つい先般も、中国家電協会の主導の下、「高級家電」に関わる授賞式が開催されました。ここでは、「高品質な生活を実現する高級家電とは、基本的な用途を満たす以外に、生活に彩りを添えるものである」と語られています。受賞商品を見ると、機能性や実用性を考慮したデザイン性の他に、室内装飾としての外観を特徴としたものもありますが、これらは「贅沢」ではなく、生活の質を高めてくれる「付加価値」として通用しているわけです。
 この度の「金箔入り白酒」問題で、もう一点、あらためて認識させられたのが「企業の社会的責任(CSR)」についてです。中国の市場は商品価格にシビアだという点が強調されますが、実は消費者は企業イメージにも大変敏感です。CSRへの取組み姿勢が企業の評価につながることをよく理解して企業活動を進めることが大事です。
 先般新華ネット、中国社会科学院経済学部企業社会責任研究センターの主催で開催された「第7回企業社会責任サミット及び第4回『中国企業社会責任レポート(2014)』発表会」では、「浩沙(Hosa)集団」というインドア用スポーツウェア大手の香港系企業が優秀企業に選出されました。同社が中国国民のスポーツ・健康に対する意識向上、スポーツ立国への寄与に関わる様々な公益活動を実施してきたことが評価されたとのことです。「社会のため」という理念を伝える企業活動、宣伝方式が今後ますます重要となってきます。
 冒頭の「金箔入り白酒」も、「中国伝統文化の継承(中国古代文学には金を食す描写がある)」「長寿祝い」等のイメージを作れれば、あるいは社会の受け止め方も違ったのかもしれません。  
日本企業が中国内販を展開する商品にも、「付加価値」を売りにしたものが多くあると思います。「贅沢」という線引きが曖昧な今、企業は市場のニーズを汲取るだけでなく、消費者に商品を安心して好きになってもらうための「理由付け」まで考える必要があるのかもしれません。


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