最近の中国自動車市場の動向
　　　　　　−日系メーカーにチャンス到来か

　2014年の第1四半期、中国の自動車市場は生産台数・販売台数ともに世界第1位、販売台数は日本市場の5倍以上となる592.23万台(前年同期比9.18％増)でした。そのうち、3月の生産台数および販売台数はともに200万台を上回り、過去最高を記録しています。
　4月に入っても、3月には及ばないものの、ともに200万台以上という数字をキープ、市場は好調です。各社の販売状況をみると、4月の販売台数トップは一汽大衆の約14.9万台、1月から4月の累計では、上海大衆が約66万台(前年同期比23.5％増)でトップです。
　日系各社はというと、4月、日産が約11.8万台(前年同期比14.7％増)、トヨタが約8.5万台(同12.4％増)、マツダが約1.4台(同19％増)と好調でした。ホンダは4月、前年同期比3.6％マイナスとなる約5.8万台でしたが、1月から4月の全体では、同10.7％増を達成しています。また、日産、トヨタもそれぞれ、19.1％増、20.2％増を達成しています。
　注目すべきは｢インフィニティ(日産)｣で、4月の販売台数は2,670台(同149％増)、1月から4月の累計販売台数は前年同期比152％増となり、すでに2013年通年販売台数の50％を上回っています。インフィニティは今年中に、湖北省襄陽市で2車種の中国生産を開始します。同社は、グローバル本社を香港に、4大設計中心の一つを北京に置き、中国展開に万全な体制を整えています。中国の高級車市場は現在、ドイツ系ブランドに席巻されており、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディの3社で80％のシェアを占めますが、インフィニティも同社のアメリカ高級車市場でのシェア実績8％と同等のシェアを、今後、中国市場で獲得することを目指しています。同社の中国高級車市場でのシェアは、2013年末には1.2％でしたが、今年に入り急成長をみせており、2％近くまで上昇しています。同社では今後5年以内に、車種ラインナップを60％程度拡大していく計画です。
　このように、自動車市場そのものは好調ですが、これには大気汚染の問題がついてまわります。2013年後半からは、PM2.5問題が特に深刻となり、中国自動車業界の排出削減もますます強く求められるようになっています。この半年ほどの間に、｢燃費基準値｣に関わる重要規定の草案が2度提出されたのも、その表れです。2014年5月7日に発表された工信部の草案｢乗用車企業の燃費平均値に対する管理強化についての通知｣では、2015年目標6.9L/100km(＝約14.5km/L)という基準が示されています。工信部では、上述の通知草案の発表と同時に、2013年の乗用車企業の燃費平均値を公開しました。これによると、79社の国産乗用車メーカー中、22社が基準を満たしておらず、2015年目標の6.9L/100kmを満たすメーカーは、ごく少数という結果です。但し、専門家の意見では、2015年目標の達成は不可能なものではないとしています。しかし、その後に控える2020年目標の5L/100km(＝20km/L)を実現するには、ガソリン車だけでなく、ハイブリッド車や純電動車の存在が不可欠であろうとしています。
　中国政府も、エコカーや新エネルギー車への補助金政策を積極的に進める模様です。つい先日は、上海市がテスラの｢モデルS｣その他の輸入純電動車に対し、3000枚のナンバープレートを無料とする政策を実行に移しました。ちなみに、上海のナンバープレートは現在、7.5万元(約125万円)程度です。
　新エネルギー車への補助金政策にも、新動向があらわれています。これまで、補助金対象は電動車が中心でした。しかし、普及の伸び悩みを受けてか、これまで新エネルギー車の目録に入っていなかった｢非プラグイン式ハイブリッド車｣を対象に、総額40億元の補助金の準備があることが関係筋から伝わっています。燃費性能が優れた非プラグイン式ハイブリッド車は、最高で3万元(約49万円)/台の補助金を受けられる見込みです。
　各種報道でも、この補助金政策で最も恩恵を受けるのは、日系自動車メーカーであろうとしています。日系非プラグイン式ハイブリッド車の筆頭といえばトヨタのプリウスですが、中国でトヨタと合弁している中国第一汽車集団や広州汽車集団にとっても朗報といえるでしょう。
　中国国内メーカーでは、長安汽車、吉利汽車が非プラグイン式ハイブリッド技術を有しているとのことです。

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