www.chinawork.co.jp
トップぺージ Book Store 経済の眼睛 業務案内

 

目次に戻る

  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


上海でも一人っ子政策の緩和スタート

 今年に入ってから、浙江省・江西省・安徽省・天津市・北京市で一人っ子政策の緩和が発表されていますが、上海でも「上海市人口計画生育条例修正案」が批准され、3月1日から実施されます。これまでも夫婦二人とも一人っ子の場合は二人目の出産が認められていましたが、今回の改正で、夫婦のうち少なくとも一方が一人っ子であればよいことになりました。なお、夫婦のいずれかが上海戸籍者であることも条件となっています。この条件に適合する女性は約37万人おり、今後毎年2〜3万人の割合で新生児が増加していくと見込まれます。

 1979年から実施されてきた一人っ子政策は高齢化社会と男女比率の不均衡をもたらしました。2012年に労働年齢人口(16歳〜女性55歳、男性60歳)が初めて減少に転じています。現在、中国では60歳以上の老人が13%以上を占めており、いわゆる「高齢化社会」の段階に突入しています。最近では、晩婚化が社会問題となっていますが、その背景には男女比率の不均衡も影響しています。2010年に実施された全国第6次人口調査によると、女性100に対して男性は118と報告されています。統計的で言えば、男性の5人に1人が結婚できないということになります。このような背景から、まずは都市部において試行しながら、来年には全国的に拡大すると見られています。

 ただ実際には、すぐに二人目の出産を望む人が増えることは難しいと見られています。昨年11月に人民日報が中国版ツイッター「微博」で行った二人目の出産に対する意識調査によると、回答者6729名のうち、半数が二人目の出産を望むと回答した一方で、半数の回答者は「望まない」或いは「様子見」と回答しています。よりよい教育を受けさせてやりたいと思う親が増えた今日、養育費は益々大きくなっています。上述の調査でも、「望まない」と回答した人の56%が経済的負担を理由に挙げています。

 ベビーブームになるかどうかはともかく、一人っ子を事故や病気で失った夫婦や二人目を望む高齢出産者は早速、出産準備のための検査や通院が増えているとの報道を目にしました。この政策発表により、粉ミルク、オムツ、子供服、玩具などのベビー用品関連企業の株価が上昇しましたが、今後、妊娠・出産に関する高度医療のニーズも高まるようです。ニュースでは、受精卵の冷凍保存を希望する人が増えていると報じられていました。こういった高度医療には中国での医療保険の適用外とされていますが、それでも一部の高額医療を求める富裕層はいます。

 一人っ子政策緩和の動向が注目される中、昨年末から今年にかけて中国の著名な映画監督チャン・イーモウ(張芸謀)のスキャンダルで話題が持ちきりになっていました。彼は一人っ子政策に違反して、7人の子供をもうけたことで罰金約748万元の支払命令が出たのち、今年1月に一括納付したそうです。二人目を望んでも経済的条件で叶わない市民少なくない中で、経済的に裕福な人にとっては、今回の緩和も十分なものではないのかもしれません。



目次に戻る



Copyright© 2006 ChinaWork Co., Ltd. All Rights Reserved.