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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


「八項規定」と「公務員の春節」

 中国では1月31日に春節(旧正月)を迎え、2月は春節のお祝いムードと長期休暇でスタートしました。但し、この時季つきものの帰省ラッシュには変わりは無かったものの、今年の春節は例年とはいささか異なる様相を見せました。
 一つは、大気汚染への懸念から、年始祈願に打ち鳴らす爆竹を自制する傾向が見られたこと。これには地域差もあったようですが、全体として例年に比べ減少したのは確かなようです。
もう一つは「公務員の年越し」についてです。公務員といえば、以前は年末のボーナス支給や年越し準備に関する物品支給の福利、年明けの手当て支給等、優遇されていました。
 それが、今年は「八項規定」以降の流れの中で、ボーナスや福利のカット、お歳暮にあたる贈答品の禁止や自粛、接待や宴席の自粛等、広範囲に渡って変化が見られたようです。
地域によっては、給与ベースの見直し、減給が図られたところもあったといいます。
  「八項規定」とは、2012年12月4日に中共中央政治局会議で採択された、勤勉倹約の励行等を含む規定です。規定が打ち出されて一年以上が経過したわけですが、浪費の抑制や幹部の腐敗一掃に向けた取組みは、今後も強化される見込みです。
 規定違反の処罰者に関しては、八項規定の実施から昨年12月末までに各地および中央・国家機関が取り調べ、処分した「中央八項規定精神に対する違反」は計2万4521件で、3万420人が処分され、うち7692人は党規・行政規律処分となっています。違反の内容は、贈答品の授受、公費による旅行・娯楽、公費による過剰な接待・宴席、公用車の管理使用違反、職務規律違反等です。
八項規定が実施されて後、中国外交部部長(外務大臣に相当)の公用車がドイツブランド「アウディ」から中国国産車「紅旗」に変更されたことも、その精神に則った代表例とされてきましたが、公費・公務員の消費動向には大きな変化が生じています。
 特に、次のような贅沢・高級志向の消費は目に見えて落ち込み、経済への影響が出ているほどです。

 八項規定の影響が大きい業界の例:

  • 高級白酒−接待や贈答品の定番であった高級白酒はすっかり敬遠され、オークションで高値がつくほどだった「茅台酒」も2013年以降株価が3分の1も下落している状況。

  • 消費カード(商品券、金券) −実質的な金銭授受の手段として横行していた消費カードのやり取りも、贈答品授受自体が抑制されたことで、激減。

  • 旅行業−以前は有名観光地に赴いて全体会議を開催、宴会を催す等のスタイルが定番化していた。しかし、2013年には全国の複数の都市で2000軒以上の3つ星以上のホテルにおいて、平均客室稼働率が60%を下回り、コスト割れを起こしている。

  • 高級レストラン−宴席利用の激減による打撃は非常に大きい。以前は全体の4割程度が公費による消費であったとする有名店もある。高級路線の有名飲食企業では、株価が半値以下になったところもあり、また、高級路線を放棄して、若い世代のホワイトカラーをターゲットにした新路線に切替えを図った企業もある。

 これら業界での消費の落込みが深刻だとはいえ、以前のように過度に公費の消費に頼っていた状況は健全とはいえません。現在の倹約路線は社会的にも評価されています。また、今後は、一般の消費者が安心して消費し、豊かさを感じられる社会が望ましいのだと思います。
春節休暇明け直後には、公務機関が休暇モードでなく、きちんと通常体制で勤務を行っているかどうかをチェックする内容の報道も目にしました。政府や公務員に対する社会の目がそれだけ厳しいという現状の表れといえるでしょう。



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