www.chinawork.co.jp
トップぺージ Book Store 経済の眼睛 業務案内

 

目次に戻る

  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


民営銀行設立への動きが本格化


 2013年6月20日に国務院常務会議で「民営銀行の設立を奨励する」という方針が打ち出されると、7月5日には「金融による経済の構造調整と高度化への支援についての指導意見」が国務院より発表され、「民間資本の金融業参入を拡大すること」、「民間資本によるリスク自行負担の民営銀行、ファイナンスリース会社、消費金融会社等の設立を試験的に行うこと」が明確にされました。
 これを受けて、民営銀行設立への動きが相次いでいます。8月23日に家電量販店大手の蘇寧雲商が上場企業の先陣を切って「蘇寧銀行」の設立申請を行うことを表明すると、続いて、騰訊(テンセント、SNS大手)、アリババが意欲を示していると伝えられ、また、金発科技、格力電器が参入を検討中との公告を発表、美的電器も意向を持っているという情報が伝えられました。
 「蘇寧銀行股?有限公司」等、数社の申請した銀行名はすでに中国国家工商行政管理総局(工商総局)による企業名称の事前審査を通過し、銀行設立への第一歩を踏み出しています。この先、銀行開設の認可を得るまでには、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)や地方銀監局、中央銀行の一連の審査を経ることになります。

 また、民営銀行設立が実現するためには、関連の「細則」の公布を待たなければなりません。現在策定中と伝えられる細則では、民営銀行の設立要件、株主の資質、持ち株譲渡に対する制限等、各方面について規定されます。
 設立要件のうち、登録資本金については銀監会内部で議論があり、100億元以上とする意見と、(5億元〜)20億元以下とする意見が真っ向から対立しているといいます。
 専門家の中には、民営銀行には高い資金力が求められるとする意見がある一方で、中国にはすでに300以上の大銀行が存在しており、これ以上大銀行を増やす必要性は無いとする意見もあります。
 「細則」は今年中に公布される見込みで、早ければ来年3月頃には民営銀行第一号が開業する運びとのことです。最初の段階では、地域を絞り、第一陣として1〜3社の民営銀行設立が認可されると見られています。地域としては、北京、天津、上海、温州、深セン等が候補に上がっています。

 民営銀行の設立規制が緩和されれば、国有銀行が銀行業を実質支配している現状が打破され、中小の民営企業への融資、支援が後押しされると期待されています。
 現状の銀行の独占的な強さは、その利益の高さにも表れています。2013年上半期のA株市場をみると、利益額TOP4は「工農中建」の4大銀行※であり、TOP10のうち7社は銀行でした。また、工商銀行1社の純利益総額は2,400社余りから成るA株市場全体の12%を占めており、A株上場の16社の純利益総額がA株市場全体の54%を占めています。(※それぞれ、「中国工商銀行」「中国農業銀行」「中国銀行」「中国建設銀行」。)

 このような状況から、今回民営銀行設立に名乗りを挙げた各企業にとっても銀行業の魅力は大きいものがあると思われますが、関連の株価も上昇しています。蘇寧雲商を例にとると、同社が8月に銀行設立を申請してから約1ヶ月の間に株価は65%の上昇を見せており、ここ5日間(9月24日時点)に限っても、同社の時価総額は約286億元も増加しています。
 「金利の市場化」と「預金保険制度」が確立されないうちは、民営銀行が広範囲に展開するのは難しいのでは、という声もあります。また、今後、銀行間の競争が激化していくなかで、民営銀行には国有銀行とは異なるサービスが求められます。
 社会の期待を背負って、どのような民営銀行が誕生することになるのか、注目していきたいと思います。



目次に戻る



Copyright© 2006 ChinaWork Co., Ltd. All Rights Reserved.