本書は、次の方々を対象とした日本語会話のテキストです。
○日本企業に就職しようとしているか、或いは既に就職している日本人フレッシュマン
○一定の日本語の基礎があり、日本企業または日系企業に就職しているか就職しようとしている日本語を母国語としない外国人(ジェトロ・ビジネス日本語能力テストを受験されるレベルの方に最適)
また、本書を学ぶ目的は、仕事上におけるコミュニケーションを円滑化することです。
企業内で仕事において使われる日本語は家族内、友人間で使われる日本語とは異なります。今までそのような日本語に接したことのない人にとっては、とても難しく感じられることでしょう。けれども、意外な事に、仕事で使われる日本語は、適切な指導さえ受ければ、企業外の会話より上達が速いのです。なぜなら、仕事で使われる日本語は、敬語や受け身の表現などにおいて企業外の会話とは違った多彩な表現がある反面、かなり標準化・規範化が進んでいるからです。
「本当かな?」と疑問に思われる方は、先ずこのテキストをパラパラとめくってみて下さい。場面が違っても、似たような構文、表現、言葉使いが多いことに気づかれることでしょう。
先輩の日本人達が磨きに磨きをかけた仕事で使われる日本語は、仕事上でのコミュニケーションを効率的なものとするため、標準化・規範化がかなり進んでいるのです。
一方、言葉は常に変化しています。外来語、スラング、流行語、若者言葉、新造語…が絶え間なく生まれ、まるで生き物みたいです。そのような観点からこのテキストを見ると、古臭い、廃れた表現がやたらに目に付き、「もうこんな表現、若い人は使わないよ」とか、「聞いたこともねーや」となりがちですが、残念ながら、長く企業で使われて来た日本語は、若い人でも抵抗できない程に、たくましく生き延びているのです。なぜなら、会社の社員が全員25歳以下であれば話は別ですが、一般的には、10代から60代までの年齢層の社員が一つ屋根の下で仕事をしている訳で、そうなると、どうしても年齢層を超えてコミュニケーションを図る必要が出て来る、つまり、どの世代にも共通する言葉=共通語が必要となって来るからです。この共通語が他ならぬ仕事で使われる日本語ですが、それは世代を超えたものであるため、当然ながら若い人達の所謂普段着の日本語とは少し趣を異にしているのです。
本書は、正にこの一見古臭く見える共通語を学ぶためのテキストですが、学習者が出来る限り無理なく学べるよう、日本語の特徴及び仕事上の日本語会話の特徴を踏まえた上で様々な工夫を凝らしました。「意外と易しいな」を必ずや実感していただけるものと信じます。
◇ 日本語の特徴
・自分と相手との関係によって言葉使いが異なる。
・相手が異性であるか、目上であるか、目下であるか、対等であるかによって言葉使いが異なる。
・男言葉と女言葉の区別がある。
・ニュアンスを正確に出すには、文法を正しく理解しなければ ならない。
・世代間における言葉の違いが大きい。
◇ 仕事上の日本語会話の特徴
・同一企業内における場合と社外に対する場合とで、一部言葉 使いが異なる。
・企業によって一部言葉使いが異なる。言葉は企業文化の一部 である。
・男言葉と女言葉の区別は企業外の会話よりは少ないものの、依然として存在する。
◇ 本書の特長
・ 「言い換え方式」の採用
一つの例文に対し複数の「言い換え可能=置き換え可能」な文を列挙した。
一般的に言って、上にあるもの程丁寧な改まった言葉使いで あり、下にあるもの程くだけた、ぞんざいな言葉使いである。
但し、これらの文は必ずしも意味が全く同じという訳ではない。意味が全く同じものと意味が似通ったものが混在している。
では、どれを、どのような場合に、どのような相手に使うべ きかを、どうやって判断したら良いのだろうか?
残念ながら、かなりの程度、経験や慣れや勘に頼らざるを得ない。一朝一夕には行かないのである。従って、慣れない者は、慣れて自信を持って「最も状況に相応しい言い方は、こ
れだ!」ということが分かるようになるまでは、安全を見て、なるべく丁寧な改まった言い方を多用することをお勧めしたい。
別の言い方をすれば、仕事上の会話においては、丁寧な改まった言い方こそが基本だと考えていれば、大きな過ちはないであろう。
学ぶ者にとっては、何通りもの言い方があることは非常に厄介であるが、最初は苦しくとも我慢して練習すれば、やがて「達人」の域に達し、日本語ならではの表現の多彩さ、表現のあや、味わい深さを知ることが出来よう。
・
標準的な言葉使いを採用
出来る限りどこの企業でも通用する標準的な言葉使いを採用した。
・ 男言葉と女言葉を区別
男言葉を<男>、女言葉を<女>で区別した。
但し、厳密に区別出来ないものも多く、本テキストでは、曖昧なものは「中性」に属すものとした。
・
作文練習
例文中に出てくる多彩な言い回しを使った作文練習を各章毎に取り入れた。
・
疑問符(?)の採用
疑問文が一目で分かるよう、疑問符を採用した。
著者