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 中国投資マーケティング
戦略マップ

進出に不可欠なロケーション戦略構築に

 

まえがき


 日本の対中投資は80年代中国の経済改革開放と同時に始まり、20数年の間に2万社以上の現地企業が中国に設立されたという。これまで幾度か対中投資ブームといわれる時期があったが、昨年からまた対中投資ブームが起き、今も続いているようだ。ブームといわれるのは、ブームに終わりがあるからであろう。しかし現実には、これまでも日本企業の対中ブームが終焉しても、そんなことはおかまいなしに中国経済はこの20年余り発展し続けている。開放された中国は世界にとって魅力に満ちた存在であり、国内総生産(GDP)が1兆米ドルの大台を突破し世界第6位に急浮上した経済パワーは世界最大なマーケットになる可能性を現実化させつつある。日本企業の中にも、一時的な日本国内の空気に流されず、長期的な戦略を持って日々奮闘し、現在の成功を勝ち取っている企業も数多くある。

 しかし、一方では中国市場はその特異性を持って時には投資した人々に大きな落胆と失望を与えてきたことも事実だ。私に言わせるとまさに『火傷(やけど)する金塊』であり、要求が厳しいわりに簡単に取らせてくれないのが、現実の中国マーケットの姿であろう。これは何も外資企業だけに与えられている試練ではない。横たわる現実の前に土着の中国企業もまた翻弄され、浮沈を繰り返している。一時、中国全土にその名を響かせていた有名企業がいつの間にかその経営がどん底に転落し消滅してしまった例はもう枚挙に暇がない。

  中国市場の特殊性はまず、長年の計画経済からの脱皮がまだ完全に終わっていないことに起因しており、外資企業とて短絡的に先進国市場と同様の計画を立て、実践すると必ず失敗を招くこととなる。先進国の経営手法が中国のビジネスに通用しないことも多い。  特異なマーケットに適応できる戦略を練る必要があり、中国市場の軽視と短絡は禁物である。経営ノウハウの上に中国市場の特殊要因を加えると効果的であるが、それに加えて現場において臨機応変に対応できる資質が要求される。このように複雑で難しい中国を見通すには様々な視点が必要であり、基本認識は落とせないものである。

 まず指摘したいのは地域間や都市農村間に存在する大きく異なる環境である。衣食住の違いは言うまでもないが、経済、文化、習慣といった様々の面において格差が見られる。経営の観点から13億の人口、31の省(自治区・直轄市)を擁する各地域をそれぞれ異なる市場と見るべきであり、進出や経営戦略の策定は各地方の具体的な現状に立脚していく必要がある。本書で提供しているロケーション戦略のための情報やツールはそのために不可欠なものであろう。
 そして、最初から中国経済社会の無秩序さに備えよう。中国市場に参入すると偽造品、コピー商品の氾濫に驚かされ、まもなく自社製品も直撃されることになる。P&G社は2001年1月まで偽商品による被害額が1.5億米ドルに達し、15%のシェアが食われてしまったと頭を抱えている。そのため社内に副社長を筆頭とする部門を設置し、コピー商品の退治を日常化している。

 また、せっかく構築した全国の販売ネットワークも地方行政の干渉や経営幹部・セールスマンの不正で破壊され、販売網そのものが寸断されてしまうことはもはや常識である。中国政府は市場秩序の整理に力を注いでいるが、これだけの国土と人口のため、時間がある程度必要なことはやむを得まい。
 中国経済社会における政府の役割が大きいにも関わらず、行政の干渉は尋常ではなく、企業トップの経営判断にまで及んでいるケースは多々ある。現在もなお、到るところで許認可制度が敷かれ、企業アプローチの不手際のために成功をひっくり返されてしまったという事例は数え切れない。日本企業の対中進出は欧米系企業のように政府のバックアップが得られないため、企業が自力で中国政府へアプローチすることが必要不可欠であり、これこそ中国の特殊な国情である。本書の内容からも欧米企業の成功が政府へのアプローチの巧みさから生れたことが理解できるであろう。

 『中国は世界の工場』という言葉は近いうちに時代遅れになり、持続された高い成長率は中国の富力を高め、消費マーケットとしての急成長が実現していくことになろう。WTO加盟が実現し、2008年北京オリンピックの決定、2010年上海世界万博の申請など、中国は次々と経済発展の起爆剤を手中に入れ、または勝ち取ろうとして無我夢中である。
日本企業が本書を大いに活用され、中国市場からより多くの収穫を得ることを期待したい。

2002年9月1日
                                (株)チャイナワーク  孫 光
 


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